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労働審判手続制度は、平成18年の4月に施行された労働審判法に基づく裁判所の個別労働関係紛争解決のための制度である。
近年、労働組合加入率が著しく低下してきて、それと共に労働者個人と使用者との紛争が激増してきているが、当事者同士の話し合いで紛争が解決しない場合には、第三者を介入させた仲裁の下に紛争を解決させる必要がある。
第三者を介入させた紛争解決制度としては裁判外の制度と裁判所の制度がある。
裁判外の紛争解決制度として最も利用しやすいのは個別労働関係紛争解決促進法に基づく労働局のあっせん制度である。
裁判所の紛争解決制度は民事調停や訴訟があるが個別労働関係紛争解決として最も有効なのは、労働審判手続である。
依頼人のMは在職中パワハラに1年以上苦しんで、退職後、どうしたら個別的労使紛争を解決できるのかと弁護士に相談したり行政書士に依頼したりと七転八倒した挙句、私のところへ相談に来たのである。
Mが会社を辞めてから私のところに辿り着くまでに1年10ヶ月を要した。
Mは、職場の上司などから暴力を受けていた。
殴られて左目の瞼がつぶれて目を塞いでいた。
左目が元通りに治るまでに2ヶ月。幸い視力に影響はなかった。
相手の会社はパワハラの事実については認めていた。しかしこちらが要求する損害賠償額については認めなかった。
そこで私は労働局のあっせん制度での解決を考えて、あっせん申請を行った。
社会保険労務士の立場としては、できれば労働局のあっせんの場で問題を解決させたかった。
しかし、損害賠償の金額の面で相手方会社の同意を得られなかった。
弁護士のあっせん委員は私たちの主張に十分理解を示してくれ会社に再考を促した。
しかし、会社は応じなかった。
Mは私の補佐で労働審判を申し立てた。
労働審判手続申立書は、訴状に準じた記述方法で作成する必要があるので、Mは私の助言を受けて申立書を作成し(実際は私の原案を清書してもらったのだが)裁判所に提出した。
労働審判は期日3回以内で審判が下されるのだが、3回の期日中に必ず調停が試みられ、調停が上手く行かない場合に審判が下される。
訴訟と決定的に違うのは、審判官(裁判官)の他に労働関係に詳しい民間から選ばれた審判員2名が加わって3名の合議で調停案や審判の内容が決められるというところである。
審判員は労使紛争の解決についての知見と経験豊かな者がその知識と経験を生かして、法令や同種同様の事件の過去の判例だけにとらわれずに、現実に即した社会一般的的に妥当な柔軟な判断を行う。
だから、労働審判手続での調停の内容や審判の内容は訴訟の判決では得られない柔軟な内容となることが期待できるのである。
社会保険労務士は裁判所での代理権がない。
だからあっせん不調の場合の次のステップである労働審判では弁護士に依頼する方が無難な解決を図れるのであるが、弁護士は敷居が高い。
今回のような損害賠償金額があまり大きくはないような事件ではなかなか弁護士が受任してくれない。
労働審判は労働審判手続申立書さえ上手く作成できれば、あとの期日は口頭での受け答えが原則であり、相手方の答弁に対する準備書面は必要ないから労働者個人でも十分労働審判手続を利用できる。
ましてや労働法の専門家である社会保険労務士が適切にコンサルトすれば必ず労働者個人の力で労働審判手続で解決を図ることができる。
労働審判手続での審理は非公開が原則である。
しかし労使トラブルで当事者と密接に利益などについて関係のある者等は例外的に傍聴が認められる場合がある。
私は労働局のあっせん申請を行うことでこの労使トラブルの内容をよく理解していたので審判期日での傍聴許可を出したところ傍聴が許可された。そこでMの労働審判手続期日に労働審判を傍聴し、事実に関する事項についてMの説明で不足するところを補足的に説明を行った。。
相手方は代理人に会社の顧問弁護士を立てていたが、何も臆するところはなかった。
Mは淡々と事実を語った。
労働者個人は労基法その労働者保護法諸法で権利の保護を謳われてもいざという場合にはやはり立場は弱く、泣き寝入り、することが多い。
しかし、人間は人生を楽しみ幸せを謳歌するために生きているのに、そのような楽しみや幸せを謳歌することを妨げる、泣き寝入り、を認めてよいものであろうか?
労働審判手続第2回目の期日で審判官から調停案が示された。
審判官は言った。
「過去の判例などからすると解決金の額は・・・くらいが妥当だろうと考えたのですが、2名の審判員の方が、会社の対応が誠意に欠けまた解決まで2年以上も要するのは期間がかかりすぎる、ということで今回は訴訟で一般的に認められる慰謝料の額に上積みした額を解決金としました。」
双方とも調停案を受け入れた。
Mの約2年の戦いが終わった。
労働審判で調停が成立した帰り道、本当に有難うございました、といって見せたMの微笑がいまだに忘れらねない。
以下の文はMから届いたメールです(一部修正してあります)。
奥村隆信様
本日も、××まで御足労頂いて、ありがとうございまいた。
遠いところ何度も御足労頂いて、ありがとうございました。
会社を退職してから今日まで、心の中でくすぶり続けていた痞えがとれ、やっと気分的に晴れやかな気分になれました。
奥村さんに出会っていなければ、恐らく八方塞になって、泣き寝入りをしていたことと思います。
本当にありがとうございました。
これから、私もやっと後ろを気にすることなく前に向かって、前進することができます。
これまでの経験は、否定的に考えずに、これからの人生の糧となるように考えたいと思っています。
2月から今日までの約10ヶ月間、本当にありがとうございました。
今後、社労士の資格を取ることになりましたら、不躾ながら、お力添えの程、お願い致します。

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※2007年4月からは労働局のあっせん代理は特定社会保険労務士か弁護士に限られています。
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